自律神経失調症の症状
自律神経失調症では、特に原因が思いあたらないのにいろんな症状が現れます。医師の検査を受けても「特に異常はありません」という診断となって、特定の病名を伝えられることもなく「自律神経失調症でしょう」と言われることも珍しくありません。
自律神経失調症は“病名”というより「自律神経の乱れが原因となって、なにかしら体の不調を感じている」といった“体の状態”をあらわしているように感じます。
肩コリ、冷え性、疲れがとれない、といった症状も自律神経の乱れが原因。つまりは「症状の度合いが軽いか重いか」の違いだと思います。
では、体や精神面にどんな症状があらわれるのか、について紹介します。
体の症状

息苦しい : 呼吸が早くなって息苦しさを感じたり、寝るときに酸欠感や息が吸いこめないような苦しさを感じるもの。特に精神的な緊張や不安感が原因のようです。
動悸、息切れ : 激しい運動をしていないし興奮しているわけでもないのに、動悸、息切れ、血圧が上がる、胸に圧迫感を感じるというもの。ストレスで交感神経が緊張して脈拍が早くなることが原因です。
微熱が続く : 特に女性で、生理前でも妊娠中でもないのに37度前後の微熱が続いたり、体がだるい、と感じるもの。

めまい、体がふらつく : 立ち上がった瞬間に気が遠くなる、歩いていてもフワフワする。自律神経失調症では、周囲が回転するめまいよりも体のふらつきを感じるめまいの方が多いようです。
偏頭痛 : 頭をしめつけられるような頭痛や、肩や首のコリをともなう頭痛。
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疲れやすい : 疲れがなかなか取れない、異常に疲れやすい、関節がだるい、体に力がはいらない、などの疲労感。

耳鳴り : キーンという耳鳴り、音が聞こえにくい、耳にものが詰まっているようではっきり聞こえずにぼんやり聴こえる、など。
ひどい肩こり : 肩こりといっても特に首から肩、背中にかけてパンパンに張ったような状態。
顔のほてり、手足の冷え : 手足は冷えているのに顔だけはほてりを感じる、といった「冷えのぼせ」が起きることもあります。冷え性よりも冷えを強く感じるケースが多く、月経痛の激しい女性、不妊症、更年期の女性に多い傾向があります。

不眠症 : 寝つきが悪い、眠りが浅い、夜中によく目を覚ます、寝不足で昼間に眠くなる、など。
運動などで疲れていてもなかなか眠れないのが自律神経失調症からくる不眠の特徴です。
食欲不振 : 食べる気がしない、食べると吐き気がする、食後にムカムカする、といった症状。美味しそうだなぁとは思うけど食べたいとは思わない、好きな食べ物だけど食べていると吐き気をもよおす、といったケースもあります。

便秘、下痢 : 胃腸のはたらきも自律神経が支配しているので、ストレスや緊張が続くと便秘や下痢が続くようになります。慢性的に強いストレスが続くと便秘や下痢をくりかえす症状があらわれます。
手・足のしびれ : 手足の肌の感覚が鈍くなって、「直接さわっている気がしない」と感じるもの。正座で足がしびれた時の感覚に似ています。
肌が敏感になりすぎて、どこをさわってもヒリヒリする、腕から手にかけてビリビリ痛む、電気でしびれるような痛み、という症状もあります。
以上が、体のおもな症状。他にも、関節痛、円形脱毛症、吐き気、嘔吐、胸痛、狭心症のような症状があらわれることもあります。
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精神面の症状
精神面の症状には、イライラ、憂うつ感、不安、焦燥感(あせり)、集中力の低下、記憶力の低下、好奇心がなくなる、無気力になる、といったものがあります。

- やる気がなくなる
- 何をする気にもなれない
- ささいなことに強い不安を感じる
- なんとなく気分が晴れない
- 感情の起伏が激しい、すぐカッとなる、すぐ涙ぐむ
- あせり(焦燥感)や疎外感を感じる
- なんとなく落ち込んだ気分になる
これらの精神的な症状も体の症状と同じように、あらわれ方や程度は人によって個人差があってさまざまです。
次は、自律神経失調症の原因について、お伝えします。
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自律神経失調症の原因
自律神経は、正反対の2つの神経がバランスよくはたらいて健康を守っています。
交感神経・・・活動中、緊張している時、ストレスを感じている時
副交感神経・・体の休息中、回復をしている時、リラックスしている時
しかし、日々ストレスの多い現代人。
長距離通勤、仕事のプレッシャー、ノルマ、人間関係、経済的不安、不規則な食生活、睡眠不足など、たくさんのストレスにかこまれて生活しています。

ストレスは交感神経を優位にさせてしまいます。その反面、副交感神経は十分にはたらけなくなる。
その結果、体の回復が追いつかずにいろんな不調が現れてしまうのです。
ストレスにはさまざまなものがあるとはいえ、やはり、人間関係、仕事の責任・プレッシャー、といったものが大きな原因でしょう。
- 自分の言いたいことを我慢して、他人に合わせる。
- 責任やプレッシャーにいつもストレスを感じている。
- 上司から責められて、私は能力がないの?価値がないの?と落ちこむ。
- 今日で連休が終わると思うと、朝からブルーで。。。
- 明日から連休だと思うと、本当にうれしい!!!
そう感じている方は多いですよね?イヤな人間関係や仕事がなければ、症状もぐんと軽くなるでしょう。

きっとご自身でも「体の調子が悪いのはストレスが原因よ」、「仕事や人間関係がなければ症状も消える」と思っているのではないでしょうか。
その通りで、ストレスの多い生活が自律神経失調症の原因となっています。
また多くの方が勘違いされていますが、実は意外なものまで、ストレスの原因となっているのです。
「明日から海外旅行だ!楽しみ!」というのも、「明日からいよいよ念願の商品開発部!頑張るぞ!」というのもストレス。
ストレスには具体的にどんなものがあるかを含めて、自律神経失調症の原因についても、くわしく説明していきます。
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自律神経失調症のチェック
自律神経失調症の症状にはいろいろなものがあります。
なかでも、肩こり、冷え性、寝つきが悪い、疲れがとれない、といったものは多くの人にあてはまる症状。珍しくもなんともないでしょう。
またほかの病気が原因で症状があらわれることもあるため、自律神経失調症の診断には医師によるくわしい検査が必要になってきます。
その際におこなわれるチェックとして、心理テストを紹介します。
- 東邦メディカルインデックス(TMI)・・・体と精神面の症状から調べるチェック
- ストレス・チェックリスト・・・体の症状から現在のストレス状況を調べるチェック
- ストレス耐性チェックリスト・・・ストレスに対してどのくらい強いか、を調べるチェック

東邦メディカルインデックスは、体の症状について43項目、精神面について51項目の質問に答えるセルフチェック。
ストレス・チェックリストは、体の症状について30項目の質問に答えるセルフチェック。主にストレスに体がどう反応しているかの質問です。
ストレス耐性チェックリストは、20項目の質問に答えるもの。前向きか?のんきな性格か?感謝できるか?といった心の持ちようから、ストレスへの強さを調べるチェックです。
著作権の関係で、当サイトでは具体的なチェック項目を掲載することができません。ネットで検索したり書籍などで参考になさってみてください。
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自律神経失調症の検査
自律神経失調症は、概念もあいまいで症状もいろいろと個人差もあるので、診断がとても難しい病気とされています。
次の3つにあてはまる場合は自律神経失調症とみなされる、というのが一般的です。
- 全身の倦怠感やめまいなどの不定愁訴がある
- 器質的疾患(病変)や精神障害がない
- 自律神経機能検査で異常がみとめられる
わかりやすくいいかえると・・・
- だるい、頭痛、疲れが取れない、といった体の自覚症状はあるけれど、検査をしても病気や原因が見つからない。
- 病気によって体の部分(組織や細胞)が変形したり壊れていない。精神面のはたらきを検査しても、異常が見つからない。
- しかし、自律神経のはたらきを検査してみると、異常が見つかった。

医師による検査では、
- 症状はどうか
- 生活習慣やストレス環境はどうか
- ほかの病気が原因ではないか
- 心理的な原因はなにか
といったことについて、面談、検査、心理テストなどさまざまな方向から検査を進めていきます。
検査の流れ
- 面接 : 質問シートへの記入や医師との会話によって診断
- 除外診断 : 症状が他の病気によるものかどうかチェックする検査
- 自律神経機能検査 : 自律神経自体のはたらきに異常がないか、の検査
- 心理テスト : 背景にある心理的要因を探る検査
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自律神経失調症の治療
自律神経失調症の症状が心にも体にもあらわれるように、治療も心と体の両面からおこなうことが大切になってきます。
食生活、運動不足、睡眠不足、たばこ、飲酒など、生活習慣に問題がある場合も多いので、医師の指導のもとで生活習慣を改善していくことも大切です。
おもにこれら4つの療法を心療内科でおこないます。
- 薬物療法 : 体の面から心身の症状を取り除く(薬による)
- 心理療法 : 心の面から心身の症状を取り除く
- 理学療法 : 体の症状を取り除く(指圧・マッサージなど)
- 生活指導 : 生活習慣を見直す
1.薬物療法
薬物療法は薬によって体と心の症状を取り除く治療で、次の2つがあります。
- 体の症状を改善する治療 : 自律神経そのものを調節するもの
- 心の症状を改善する治療 : 不安などの精神症状を取り除くもの
2.心理療法
心理療法は、心の原因を探してストレスに強くして心身の安定をはかる治療。次の3種類の治療があります。
- 心から体にはたらきかける治療:簡易精神療法、交流分析、行動療法など
- 体から心にはたらきかける治療:自律訓練法など
- 心から心にはたらきかける治療:内観法、森田療法など
3.理学療法
理学療法は、指圧、マッサージ、温熱療法などで体の症状をやわらげる治療。
自律神経失調症の原因はストレスからくる筋肉の緊張。筋肉をほぐして緊張をやわらげれば回復モード(副交感神経)に切りかわるので、体の回復が促進されていろいろな症状も回復へと向かっていくのです。
4.生活指導
不規則な食生活、睡眠不足、運動不足、多忙な仕事、シャワーなどの生活習慣が、自律神経失調症をひきおこす原因となっている場合が多くあります。

その他にも、パソコン、テレビ、長距離通勤、飲酒、喫煙、食品添加物、暑さ、寒さ、洗剤・シャンプー・芳香剤などに含まれる合成の界面活性剤、人間関係のストレス・・・。
これらのものはすべて交感神経を優位に。その結果、体を回復する副交感神経がはたらく時間がどんどん少なくなってしまうのです。
生活習慣を見直して活動(ストレス)と休息(リラックス)のバランスを見直すことは自律神経失調症を改善するための大きなポイントです。
自律神経失調症の治療では、失調症のタイプ、性格、状態、生活習慣などを考慮して、4種類の治療法を組み合わせて進めていきます。
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